遅咲

9月10日、対抗戦開幕戦・青山学院大戦。4年目にして初めて対抗戦アカクロスタメン出場を果たしたのがPR井元正大選手。

「前日の夕方にジャージプレゼンテーションがあって、明日自分が出るんだな…と思い始めるとだんだんと緊張してきました。」

布団に入りながらも、自身の持ち味であるスクラムについて試合のイメージをしていると「ちょっと寝れなかったです」と頭をかきます。試合に入りファーストスクラムを安定させると、ようやく気持ちが落ち着いたとデビュー戦を振り返ります。

「夏合宿とかと違って公式戦は自分たちも相手校さんも気持ちの持ちようが違うというのを感じました。スクラムではとにかく(HO佐藤)健次
とコミュニケーションを取るのを意識してやってました。このスクラムを押したいのか、安定させたいのか、そういう話をずっとヨコでしゃべっていました。全体的にスクラムは60点。良かったところはペナルティを取ったり、フリーキックを取ったりできた事、チームにとって良かったと思います。一方で相手の速い球出しもありましたが、相手ボールに対するプレッシャーがかけづらくて、そのあたりはこれからかなと思います。」

中学から早実、高校では相良昌彦主将、小泉怜史選手、植野智也選手、今駒有喜選手…「四天王」と呼ばれたメンバーとともに花園出場。大学入学後も先にアカクロデビューを果たした「四天王」を追いかけようと、学年を経る毎に順調にチームをあげます。そんな井元選手が悔しい出来事だったと振り返るのが昨年夏のEチームへの降格。

「自分は2年生から寮生で、周りが試合で活躍している中で、自分がなかなかチャンスが与えられないカテゴリーまでいってしまって…結構気持ちが辛かったです。」

そこで改めて気づいたのは、周囲との比較に振り回されていた自分の弱さでした。

「とにかく他人と比べてしまっていた。誰より何が優れている、何が劣っているとか、そういうことばかり考えていました。そんな中で自分より下(のチーム)がいなくなって気づいたことは自分にフォーカスを当てて、自分がどうなりたいかを考えるしかないということ。大学生活も半分が過ぎた3年生で時間がないという事で、とにかく自分の武器を作ろうと。ボールキャリアはセンスが問われると思うのですけど、ディフェンスのところはどれだけ体を当てられるかとか、仲間の為に頑張れるかとか、そういうところは自分から変わらなきゃと思いました。」

考え方が変わるとそれが言動にも。部内マッチで一方的に負けていたEチーム、チームメイトの中に広がるあきらめムードが気になり、試合中のインゴールの円陣で切り出します。

「ミスしたヤツ、次のプレーで思いっきり良いプレーしよう。一つでも(チームの)カテゴリーをあげるんだ。抗え(あらがえ)。おれは本当にこんなところで終わりたくない。」

自分を見つめ直し、上だけを一点に見つめなおすと、そこからチームをあげて3年生の終わりにはBチームまで再浮上。小林賢太副将ら4年生PR陣が抜けた勝負のラストイヤー、1学年下の川ア太雅選手がPRにコンバートされるという情報を耳にしても、そこに他人と比較をし続けた過去の姿はありませんでした。

「(前コーチの)権丈さんが『上がいなくなったからと言って、Aになれるもんじゃないぞ』と強く言ってくれて、そのおかげもあって安定はないし、いつどの試合で変わるかもしれないし…と。とにかく自分にフォーカスを当てています。Eチームに居なかったら今の自分はないと思っています。」

ラストイヤーになって春から夏にかけてAチームに定着、持ち味のスクラムの成長を話します。

「去年と違うところは練習で組む本数が格段に増えている。スクラムを組めば組むほど自分が意識しなくても、いい形というのが定着してきて、そこが自信に繋がっていると思っています。」

高校時代から苦楽をともにしてきた四天王とともにピッチに立つ時間が楽しいと目を輝かせます。

「僕は中学から早実でラグビーをしていました。四天王は高校から入ってきて、こいつら本当にラグビーうまいな…と思っていました。下級生の頃は、そいつらが大学ラグビーで活躍できているのを見ると嬉しかったですし、いつかは同じところに立てたら、めちゃくちゃ楽しいだろうなと思って見ていました。今、同じピッチに立ってみて、他の人よりも話せることも多いですし、楽しいですね。」

Eチームから1年間でアカクロへ。高校時代に着慣れたアカクロも、大学では苦労してたどり着いた分そして注目度の分、全然意味合いが違うと話します。

「高校は正直、学年があがればあがるほど着れる回数も増えていく。大学のアカクロは150人の部員から選ばれているというのがありますし、観客の人たち、OBから熱狂的なファンの人までいて見られている度合いが違う、何を背負ってやっているかが違くて、大学のアカクロは凄いものだなと感じています。」

まわり道の末に伝統のアカクロジャージにたどり着いた遅咲の苦労人、これからもブレずに自分にフォーカスを当て続ける先にアカクロがあると信じて戦い続けます。【鳥越裕貴】



井元正大選手。「スクラムではとにかく80分間を通して支配したいです。仲谷さん(コーチ)が言っていたのですけど、戦えるというところではなくて相手を圧倒するというところまで一戦一戦これから目指していきたいと思います。課題はアタック、目に見える活躍ができていないので、そこをAチームで出るものとして働けるように頑張っていきたいと思います。」

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