総力

12月11日、大学選手権3回戦・東洋大戦。ラストプレーの正面PGを自ら落ち着いて決め、迎えたノーサイドの笛…珍しくCTB吉村紘副将が感情をあらわに拳を突き上げます。記者会見、その事について問われたゲームキャプテンが話します。

「派手なガッツポーズをしたかは覚えていないですけど…。この1週間、全部員相当なプレッシャーがあったと思うのですけど、勝ち切れた事にホッとしたというか、そういったプレッシャーが現時点で解かれた喜びじゃないかなと思います。」

試合前日も「寝つきが悪かった」と話したこの1週間を振り返ります。

「今週の試合に入るにあたり、正直怖かったです。それは東洋大学さんをリスペクトしているからですし、ワセダがここで負けてはいけないというプレッシャーもありました。相当緊張感を持って過ごしてきました。」

負けたらシーズン終了、4年生は引退のプレッシャーの中、練習の雰囲気も変わったと手応えを感じながらも、勢いに乗る相手に対して前半からリードを奪われる苦しい展開。後半に入ってHO佐藤健次選手、LO前田知暉選手、FB伊藤大祐選手らを投入して逆転勝利、リザーブ選手の効果について質問が続く中、吉村紘選手が前置きをつけながら説明します。

「誤解されたくないのが前半で代わった選手たちもベストパフォーマンス、しっかり体を張ってくれたからこそ7-12で折り返せた。そこでエナジーを持った選手が入ってきて、敵陣の入り方を上手くできたことがスコアできた要因かなと思います。」

ミックスドゾーンで記者に囲まれた佐藤健次選手も口を揃えます。

「後半、スクラムのペナルティ(を取れたり)とか、プッシュできたのはただ僕が入ったからではなくて、前半の安恒の組み方でこういう組み方をすればいけるなという感覚を掴ませてもらっていた。彼の前半の頑張りというか、そういうのが後半のプレーに繋がったと思います。僕が前半から出ていたらこうなってなかったとかなと…。彼がいるというのは心強いですし、これからまた彼と一緒に切磋琢磨していけたらと思います。」

アカクロジャージを着て戦ったメンバーだけでなく、ノンメンバーのグラウンド内外のサポートもチームを一つにします。

「僕たちが東洋に勝てたのは出ていた15人だけじゃなくて、FWのラインアウトだったら鏡副将がいろんな分析をして『ここが空いている』、『相手のここが弱い』とか、僕たちがディフェンスだったら『こういうのをやってくる』とか、ずっと言ってくれた。僕たちだけじゃなく色んな部員が協力し合って力を出し合っての結果。僕たちは『15人じゃない、150人いるから』と試合中も言っていました。ワンチームになれているのかなと思います。」(HO佐藤健次選手)

「ラインアウトに関しては、鏡も夜にFWの選手たちを集めて時間をかけて分析していましたし、小西も試合に出られなかったですけど、Bチームを集めて東洋のアタックを分析して練習で出来る限りの再現に務めてくれた。チーム全体としての準備が実った勝利だったのかなと思います。」(CTB吉村紘選手)

帝京戦以降、試合毎に続く寄せ書きの儀式。出場メンバーが決意を込めて書き込んだ文字のまわりにノンメンバーが託す思いを書き足します。
”もっとこのチームでラグビーをしたい”ー。”来週も紘さんにパスしたいです”ー。

「この4年生と終わりたくないと、心は決まっていたのですけど、寄せ書きを見て更に覚悟が決まりました。来週を作れるのは僕たちしかいないと。」(HO佐藤健次選手)

試合後、全体集合が相良昌彦主将の手締めで解散になると、今度は4年生だけで集合します。

「4年生もさらに1コ、2コとギアをあげてワセダのために完全燃焼できるように、雰囲気づくりを最後の日までやっていきたい。学生スポーツは4年生の力が必要になってくると思うので、満足する事なく、下の代にいい影響、ワセダらしさを残せるようにハードワークしていこうと。」(CTB吉村紘選手)

このチームでも1日でも長くラグビーを。部員全員の総力でつかみ取った勝利で、上井草で過ごす幸せな日常に戻ります。【鳥越裕貴】



上井草の鉄笛を吹く吉村紘副将。欠場の相良昌彦主将から「『頼んだよ』という言葉は試合前にかけてもらった。僕だけじゃなくて全部員がキャプテンが居ないまま終わるのは理想としていないので。絶対に勝って、昌彦がグラウンドに立つ舞台を準備しようというマインド、僕だけじゃなくて全部員がそうだったと思います。」

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