体現

12月11日、大学選手権一回戦・東洋大戦。ダメ押しトライをあげた4年生WTB松下怜央選手はミックスドゾーンで開口一番「安心しました。」と笑顔を見せます。後半32分、ラインアウトからの連続攻撃、サイン通りに右サイドに回ってボールをもらうと4人のタックルを振り切る圧巻の走りでインゴールに飛び込みます。

「もらった時にトライをするというビジョンはイメージ出来ていました。取り切れなかったらチームも勢いづかないですし、僕自身の思いのこもったプレーが出来ましたし、結果に繋がって良かったです。」

激闘の早明戦から1週間、練習自体はいい雰囲気で出来たと話すものの対戦機会の少ない相手に対して

「東洋はリーグ戦で殆ど戦わないチーム。何かあるんじゃないかという不安が強かったです。勝てる準備はしてきましたけど、ちょっと不安が残る1週間でした。勝つ事は絶対なのですが、東海にも勝って3位になっている実力あるチーム、僕らが慣れていない外国人も多く在籍している中で接戦になるなというのはありました。」

そうした不安を和らげてくれたのはBチームの存在、仮想東洋としてアタックとディフェンスを精度高く再現してくれたと話します。

「Bチームが東洋と全く同じクオリティでやってきて、Aチーム自身それにやられたりした事もあったので準備は出来ていました。練習と同じシュチュエーションが試合の中でも起こったので、想定通り準備してくれたBチームに感謝しています。」

そして高ぶる緊張の1週間の中、最後に背中を押してくれたのは試合に出られない4年生が寄せ書きに記したメッセージ 
― ”まだこのチームでラグビーがしたい。”

「吉松(立志選手。4年)の寄せ書きでした。今も思い出すと潤んじゃいそうなのですけど、その一言に尽きると思っています。ノンメンバーは試合に出られないけど、まだラグビーがやりたいと全員が『Same Vision』を見ている…その寄せ書きを見て、Aチームはそれに応えていかなければならない、本当に体現していかないと思いました。僕たちは試合に出て勝たなければならないです。」

シーズン最終盤、早明戦に続いて槇瑛人選手とともに両WTBは2試合連続トライ、大外のアタックで取り切る形が出来つつある中で思い出すのは下級生時代にバックスリーを指導してくれた長井真弥コーチの言葉。

「その頃(槇)瑛人は試合に出ていて、僕と(小泉)怜史が出ていない時に長井さんが『お前らが最終学年になった時に後ろ3人で立つんだよ。そういうイメージを持って常に練習しろ』と言われていました。それが今、実現している事で『俺ら3人でチームに勢いを与えよう』と言うのは常に話しています。3人でミーティングもよくしますし、チームをトライでもディフェンスでも常に一番後ろから支えるイメージでやっています。」

後半32分のダメ押しトライ、インゴールで仲間に揉みくちゃにされた後、ゴール裏に陣取った部員席に指を向けます。

「150人居る部員の代表として、責任と覚悟を持ってやっています。ノンメンバーとも同期とも一緒にまだまだラグビーをしたい、ワセダで過ごす時間をもっと長くしたい…もう一回みんなでラグビーが出来るという嬉しさ、喜びを仲間に示した感じです。」

4年生として、バックスリーとして仲間の全ての思いを背負って戦い続けます。【鳥越裕貴】



松下怜央選手。昨年度と同じ準々決勝で早明再戦へ。「去年から積み上げてきた1年間を体現するだけですし、やっとそこ(の舞台)にたどり着けました。しっかり悔いなくメイジに勝ち切りたい。」

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