待望

12月25日、大学選手権準々決勝・明治戦。後半終了間際、メイジ怒涛の連続攻撃で迎えた16フェーズ目、メイジWTB石田吉平主将のカットインにワセダSO野中健吾選手が刺さります。80分を告げるホーンが鳴ったその瞬間、ジャッカルに入ったのはFL相良昌彦主将、ラックの真後ろで見ていたCTB吉村紘選手がその光景を振り返ります。

「(攻撃を)ずっと続けられたらキツいなと思っていました。僕が池戸君にプレッシャーをかけてスカしちゃってヤバイと思ってからの展開。ボールがポロッと出てきた瞬間、ホッとしました。(相良)昌彦に助けられました。ありがとうという感じです。」(CTB吉村紘選手)

前日の上井草での決意表明で仲間たちを前に約束…”試合終了のホイッスルが鳴るまで自分が一番体を張り続けます!足が折れても、頭が揺れても最後まで戦い続けます!”…有言実行のジャッカルに3試合ぶり復帰の相良昌彦主将が胸を張ります。

「去年負けて学んだことなのですけど、スキルとかじゃないなと感じています。抜かれたら全員で戻るとか、キックチェイスを全員でいくとか、抜けたらみんなでサポートする、こぼれ球をセービングするとか、そういうところが試合最後のスコアにつながると思っています。それを自分がライン際のところまで戻ってジャッカルできたことで体現できたのですごく良かったかなと思います。ノーサイドの後は、去年の先輩たちの顔とか、4年生の顔とかが浮かびました。」(FL相良昌彦主将)

昨年の同じ舞台の敗戦から始まった1年、チームのテーマの一つである『1/1000の拘り』…その言葉に込めた思いを解説すると、”三苫の1ミリみたいですね”とメディアが会話の流れの中で返します。

「でも、マジでそんな感じです。ああいう泥臭いプレーが毎回は実を結ばないのですけど、10回に1回、それが良い展開になれば…。いいじゃないですか。そういうのが大事かなと思います。」(FL相良昌彦主将)

11月の早慶戦で負傷交替、シーズンの一番大事な時期の離脱、チームを外から見ることでメンバーに対する接し方が変わったと振り返ります。

「自分はとにかく厳しくやればいいという考えだったのですけど、それが全員の正解ではないのだと感じました。一人一人に対して接し方を変えてみたりとか、逆にチームを一歩引いて見られたことで自分にとって大きなプラスになっていると思っています。」(FL相良昌彦主将)

間近で見続けている大田尾竜彦監督もその変化を話します。

「春はすごい厳しい事を言っていて、本人も去年の負けから得たものから、練習中もものすごい厳しさとか緊張感を体現してくれていた。ただ、そういう時期ももちろん必要なのですけど、チーム作りにおいてそうでない時期もある。それに本人が気づいたのではないかと思います。」(大田尾竜彦監督)

ピッチレベルに立ってチームと一緒に戦いながらも、外から見るチームがまとまっていく様子に手応えを感じます。

「疲れている時とか劣勢の時にバラバラになってしまうところがチームの年間を通しての課題だったのですけど、僕が抜けていた1ヶ月間で吉村を中心に4年生がひとつになって、引っ張るキャラでない人も声を出すようになったり、そういうことによってチームがまとまるようになった。一戦一戦越えていくことで成長していると肌感で一体感を感じています。スキル的な部分は急には伸びないのですけど、ひとりひとりスイッチ入っているなと顔を見ればわかる。そういう部分が成長したなと。」(FL相良昌彦主将)

13-14で迎えたハーフタイム、ロッカールームに戻ってきた同期の槇瑛人選手の姿が印象的だったと嬉しそうに続けます。

「槇ってプレー中とか殆ど喋らない…ただボールをもらったら走るみたいなプレーヤー(笑)。それがロッカーに入ってくる時に『こっからだぞ。こっからだぞ』と言っていて、うわぁー…と。本当に勝ちたいんだな、気持ち入っているなと感じて、ちょっと感動しました。気持ちって本当に大事だなと2週間で思いました。」(FL相良昌彦主将)

4年生ひとりひとりの成長そして主将の待望の復帰で、一年越しのリベンジそして先週18日の4年早明戦のリベンジを同時に果たすこれ以上ない最高のストーリー。

「体を張ってくれるチームを引っ張ってくれる選手。僕だけじゃなくてほかの選手に与える影響は大きい。彼の復帰はチームが一つになるきっかけとなります。」(CTB吉村紘選手)

ライバル明治の壁を乗り越えて2年ぶりの年越し、相良昌彦主将の復帰でチームは更に勢いづきます。【鳥越裕貴】



相良昌彦主将。「去年と同じ対戦カード、同じ準々決勝ということもあって去年の4年生の思いとか、先週4年生の早明戦で負けてしまったので同期の分もリベンジをしようと臨みました。結果は去年負けていたスクラムの部分、接点の部分で成長した部分は見せられたと思います。今日の勝利は収穫の多い試合だったと思います。」

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