復活

1月2日、大学選手権準決勝・京都産業大戦。リードが目まぐるしく入れ替わるしびれる試合展開の中で後半26分、決勝トライをあげたのが3年生・SO/FB伊藤大祐選手。ミックスドゾーンで多くのメディアに囲まれながら、鋭角なステップワークでディフェンス2人を振り切ったシーンを話します。

「FWを前に行かせた裏を通して野中だったので(スペースが)空いているだろうなと思っていましたし、勝負所は来ると思っていたので自分で取り切るマインドはありました。あのシーンはしっかりスペースが見えて走り込めて、キレとかスピードが戻ってきたかなと思います。怪我から復帰してトライをとれたのは多少自信になります。」

大田尾竜彦監督も同じシーンを振り返り、決定的な仕事をしたエースの活躍を評価します。

「野中を10番に入れたら球離れがすごくいいので、外側の選手は走りやすいのではないかと思いますし、(伊藤)大祐の力だとああいうスペースを走り切れるかなと。」

怪我から復帰後、準々決勝後の記者会見で「『大祐どこで使うか問題』というのが(チームに)ある」と表現し、報道陣を笑わせた指揮官はここに来てのチームの形に手応えを口にします。

「大祐が10番に入る事でキャッチ、ラン、パス、すべてのプレーのスピードが上がるので、ラグビーのスピードがすごく早くなる。そのへんが彼が10番の時の一番の魅力だなと思います。小泉の左足はうちのゲームを作る上で非常に大きいので、前半から伊藤大祐が10番にいて、小泉が15番にいてそれでゲームをつくって。あとはお互いにどのギャップが見えるかとなった時に、最後伊藤大祐をスペースを走らせるということが、うちとして形としてパターン化できているかなと思います。」

二つのポジションを一試合の中でこなす事になる伊藤選手自身もやる事は変わらないと続けます。

「スペースを見てボールを運ぶ役割はセンターポジションの10番、15番で一緒だと思います。イッコ後ろに下がるだけなので、あまりイメージは変わらない…そのままやっている感じがします。」

大一番の準々決勝・メイジ戦の翌週ということに加えて、いつもと異なる中7日という変則的な試合間隔、調整も通常週と異なったことで「若干のずれ。勝手に先入観を持ってしまった」と首をひねり、試合全体を通して振り返ると反省点も多いと伊藤選手は話します。

「崩してはいるのですけどハンドリングエラーとかあって…そこさえなければもっと楽な試合になったと思いますし、そこをミスしたら苦しくなる。ワセダとして得点を取らないといけない…もうちょっと自分達ならできるというような反省がたつような試合でした。」

8月の夏合宿・帝京大戦で負傷、そこから長期離脱を余儀なくされただけに対帝京に対する思いは人一倍強く。ミックスドゾーンでの取材時点で帝京対筑波は試合中、「個人的には…」と前置きした上で続けます。

「個人的には帝京とやりたいですし、借りを返したい。僕のところで仕掛けてプレッシャーをかけていきたいです。次も(試合を)決めるシーンが来ると思っていますし、もう一回反省して帝京に向けてしっかり戦いたいと思います。」

3年ぶりの”荒ぶる”へ。高校(桐蔭学園)時代に日本一を経験している伊藤選手が準決勝で完全復活、打倒帝京に闘志を燃やします。【鳥越裕貴】



伊藤大祐選手。東洋戦で復帰後の会見で大田尾竜彦監督は「ミスもすればビッグプレーもする。でも彼がいることで対戦校に与えるプレッシャーが違うのではないかと思います。」

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