凱旋

5月14日、熊本・えがお健康スタジアムで行われた春早明戦。熊本出身のSO仲山倫平選手が地元でアカクロデビューを果たします。

「プレータイムこそ短かったのですけど、地元熊本でアカクロのジャージを着てプレーできたのは大きな経験になったと思います。素直に嬉しいの一言に尽きます。チームとして結果は負けてしまったのですけど、個人的にはここで伝統のあるジャージを着れたことは嬉しく思っています。」

地元で行われる早明戦を「そこに向かって取り組むのが一つの小さな目標」と位置付け、試合3日前のメンバー発表で監督からリザーブ入りが告げられます。

「正直まさか選ばれるとは思っていなかったです。ビックリしたというのが最初の気持ちで、その後に熊本という地元で出来るという嬉しさ、そして緊張や不安…いろいろな気持ちが織り交ざったのですけど、最後はやってやろうという覚悟が決まりました。親も僕よりも喜んでくれました。」

小学生の頃にタグラグビーの交流会でプレーして以来のえがお健康スタジアム。試合時間残り5分のところでCTBとしてピッチイン、バックスタンドに陣取った自身の出身スクールである玉名グリーンベルトラグビースクールのちびっ子達が「倫平コール」で迎え入れ、交替を告げる場内アナウンスで出身地の情報が補足されると会場も大きな拍手で包まれます。

「空気感だったり慣れ親しんだ人や環境で緊張が薄れ、自分の中でエネルギーが湧いたと実感しています。(反応の大きさに)アカクロのジャージの重み、価値を改めて感じさせられました。」

試合終盤はディフェンス中心の時間帯となり、ボールを触る機会には恵まれず。現在の立ち位置を自覚しつつも、前を向きます。

「まだまだ出場時間も短いですし、そもそも今日のプレータイムから戦力として認められるにはまだ遠いかなという感覚が自分にあります。それでも地元でアカクロを着てメイジを相手にしてグラウンドに立てた事。そこには大きな意味があると思うのでここをスタートラインにしていきたいです。」

ワセダの大ファンだったという父親の影響もあって「小さいころからワセダのラグビーがテレビで流れていて刷り込まれていました。半ば洗脳に近いです(笑)」と、熊本・玉名中学から海外留学(Wellington College)を経て、ワセダへ。ルーキーイヤーのジュニアから、チームをあげてシニアチームでプレーが続く2年目の春、昨年度との違いを話します。

「昨年は戦術を使えていない…戦術を実現するために自分が動かされているというイメージが大きくて、一言でいうと受動的なプレーしかできなかったです。今年は戦術をうまく使って自分のやりたいような動かし方やテンポ、やりたいようなラグビーを実現するということが能動的にできているなと思います。去年は一生懸命でパス、ラン、キックすべてに視野が狭くなっていたのですけど、今年は視野を広く持ってパス、ラン、キックの選択肢を持ちながら、柔軟な選択ができるようになっているかなと感じています。」

今季のチームスローガン「Waseda First」の中で、仲山選手もファーストプレ―に強い拘りがあると話します。

「一年間の目標として、一番最初のプレーの精度と熱量に拘る。それを徹底的に毎練習、毎試合をやりきる。それを積み上げた先にスタメン、荒ぶるが見えてくると思うので一つずつの練習を大切に。飛び級で成しえるものではないので、ひたむきに挑戦を続けていけたらと思います。」

束の間の故郷での時間を終えて、機上の人へ。

「一番の課題はフィジカルの強さ。これに加えてパス、ラン、キックの精度を高めてまわりを使える選手になりたい。今度はレギュラーで、勝負に勝てる選手になって帰ってきたいと思います。」

小さくなっていく熊本の街を見下ろしながら更なる成長を誓います。【鳥越裕貴】



思い出のスタジアムで試合後には地元の関係者、ラグビースクールの子供たちから声をかけられて笑顔。「田舎の小さい街ですけど、ラグビーというスポーツを通じて大きな舞台に立てることを示せたかなと思います。子供たちに夢とか大きな目標を与えられるように成長していきたいと思います。」

inserted by FC2 system