繋ぐ

12月17日、大学選手権3回戦・法政大戦。アカクロ初スタメン、背番号9を背負ったのが3年生SH清水翔大選手。70分間をSH、宮尾昌典選手投入後はWTB、フル出場の一戦を振り返ります。

「比較的やり続けられたかなと思います。ただ細かい部分だったり、フェーズが重なったり、時間がどんどん経つにつれて(プレーの)精度が悪くなってしまった部分もあったので、そこは今後詰めていかなきゃいけないと感じています。」

横浜ラグビースクールでラグビーを始め、早実へ。大学入学後は宮尾昌典選手、細矢聖樹選手と高校時代から花園で活躍したビッグネームの背中を追いかける日々。下級生時代からアカクロを着て活躍する同期の姿を

「正直めちゃくちゃ遠くに感じていました。1、2年生の時はそのデカい背中に対して、怖気づいてしまう部分もありました。」

それでも3年生になって自分を見つめ直し、勝負できる部分を明確に…細部への拘りを大切にします。

「パススキルとかは勝負できるなと思いますし、ボールを取る人への気遣いだったり、ルーズボールの反応、ディフェンス。自分ならではのプレー、持ち味もあるのかなと思います。」

一つ一つの練習を積み上げて早慶戦からリザーブでメンバー入り。初めての大学選手権を前に、10日の4年早明から先輩たちの思いも受け継ぎます。

「去年自分が出ていた試合で4年生の偉大さみたいなものを感じていたのですけど、今年も同じように…特に早実組が活躍していたように感じて、4年生の懸けてきた4年間の重みや思いを感じました。試合後とかは『次の試合、頼むよ』と言ってもらえました。」

試合前の寄せ書きの儀式、思いを「繋ぐ」の文字に込めて筆を入れます。

「本来出ているはずの島本さん…練習の度にわからないことがあったら、何でも答えてくれるすごいありがたい先輩、一番リスペクトしている先輩です。島本さんがケガで出られていない状態ですし、同期の宮尾が戻ってくるという試合でもありました。自分がやるべきことをやって、一つでも次に繋げたいという気持ちもありましたし、4年生のためにも次に繋げたいという気持ちもありました。あとはハーフが繋ぎ目という役割なので、そういう思いも全て込めて”繋ぐ”という字を書きました。」

この日、電光掲示板裏のアップスペースからグラウンドに足を踏み入れると自然と目頭が熱くなります。脳裏に浮かんだのは早実2年時の東京都予選の苦い思い出でした。

「ここで(早実の)イッコ上の先輩を引退させてしまった…ベンチも一緒だったので、ちょっとデジャブというかフラッシュバックする部分がありました。自分が高2の時にイッコ上の代を終わらせてしまったという気持ちが強くて、4年生の早実の先輩たちをここで引退させたくないと。また、自分はずっと下のチームにいて、今日出られていない4年生とやる時間も長かったですし、その為にもこの試合を本気で勝ちに行かなきゃいけないと、ちょっと4年生のことを思っていたら込み上げてきてしまいました。」

様々な思いが交錯し、緊張感に包まれていた中でも、グラウンドでハドルを組むと自然と肩の力が抜けたと振り返ります。

「ハドルで声を出した時に、なんかいい意味で切り替えができました。ひとつひとつのプレーに気持ちを込めて、集中して取り組めました。」

54-12の完勝。4年越しの”個人的リベンジ”…秩父宮での思い出を塗り替えてチームを次の舞台へと繋ぎます。

「今日出た課題を一つ一つ整理していくのと、自分でも選手権で勝負できる部分はあったので、そこを明確にして。短い時間しかないですけど、またひとつひとつ成長してメンバー争いに食い込んでいければと思います。」

負けたら終わりのノックアウトステージ…シーズンを1日でも長く、3年生以下も思いは同じです。【鳥越裕貴】


レベルの高いポジション争いの中で急成長を見せている清水翔大選手

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