主将

2月4日、予餞会。早稲田大学ラグビー蹴球部主将として最後の務めとなるスピーチで、指導陣や同期への感謝、そして後輩たちへのエールを送り終え、伊藤大祐主将が清々しい表情で4年間を振り返ります。

「寮生活とか練習している時とか、そういう日常が楽しかった。4年間、本当にすべて…良い事も悪い事も含めてよかったなと思います。良かったことは今後も続けていきたいですし、悪かったことは良い事に変えれるように、今後の人生を変えていきたいなと思います。」

桐蔭学園高校1年生時から花園で活躍、主将を務めた高3で全国制覇を果たし、世代のトップ選手として鳴り物入りでワセダに入学。ルーキーイヤーからアカクロに袖を通して活躍しながらも、同時に下級生時代は度重なるケガに苦しめられ、「なんでこんなにケガするんだろう…とか思ったりもしました…」。
4年生となり、ストレッチやリカバリーにこれまで以上に時間をかけるようになると春先から大きな離脱なくシーズンを完走、常にグラウンドに立ち続けてチームを牽引します。

「これまでとの違いは何だったのかなって思うと、自分自身のためだけじゃなくて、誰かのため…。その人たちの顔が頭をよぎるとケアだったり、トレーニングをおろそかにしないという部分が出てきました。それは神戸でも続けていきたいです。」

高校時代から一学年下で常にその背中を見てきた佐藤健次新主将は「一番プレーで引っ張って、本当に前に立って戦っている人」と話します。100人を超える大所帯、時にひとりで走りすぎてしまう場面もありながらも、足りない部分を自ら認めて周囲の心を掴みます。

「いろんなところで僕たちを頼ってくれた。一番勝ちに貪欲だったリーダーだと思うので、ああいう姿を僕も見習わないといけないと思います。」(佐藤健次新主将)

シーズン終盤になると試合前アップを終えてロッカールームに引き上げる際、バックアップメンバーひとりひとりと握手、練習をサポートしてくれたメンバーに感謝の気持ちを伝えるように。

「対抗戦の帝京戦。(昨年度も)決勝で負けてしまって、去年の先輩たちのために…というのもありましたし、1年間やってきて、ここで帝京にまた大敗したらワセダは下にいくんじゃないかという思いもあった試合でした。結果負けてしまったのですけど、あれぐらいから何か自分の中で、本当に『みんなにありがとう』って思うことが多くなっていました。だからそういう行動になっていたのかなと思います。」

人として深みを増したラストイヤー、周囲のメンバーも惹きつけられるようにまとまりを見せます。

「(永嶋)仁も(岡ア)颯馬を始め、みんな僕の足りていないところを一生懸命チームに与えてくれたいいチームでした。強いチームにはならなかったので悔しい思いはあるのですけど、今後も僕も助けられて生きていくと思いますし、いつか同期を助けたいなと思っています。仲間と本当の意味でいい関係になっていく事を自分の中でも大切にしたいです。」

予餞会前に行われた追い出し試合、4年生学生スタッフもピッチに入って穏やかな雰囲気になった時間帯。女子マネージャーがボールを持ってゆっくりとゴールラインに歩みを進めた次の瞬間、グラウンド外に居た伊藤大祐主将が猛スピードで走り込み、味方からボールを奪い取ります。

「ベンチから『大祐、最後にもう一回行って来い』と。スパイクも履き直しました(笑)」

対戦相手の2年生部員が呆然とする中、全速力でインゴールへ。今シーズンを締めくくる笑顔のラストトライ、この学年の主役は最後までやっぱり伊藤大祐でした。【鳥越裕貴】


追い出し試合で独走トライをあげる伊藤大祐主将。卒業後はコベルコ神戸スティーラーズへ。「リーグワンは全てのレベルが高いですが、早く出て同期に応援してもらいたいと思います。」

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