主体

2月10日、上井草グラウンド。温かな日差しの中で午前中のウエイト、午後のスキル練習を終えた佐藤健次新主将が汗を拭います。

「HOで言ったらスローイングスキル、PRやFWで言ったらスクラムのディテールのところ、BKで言ったら細かいスキルのところなど個人のベーシックスキルが大事になってきます。僕がチームに話す時は土台作りと…桐蔭の時も言われていた言葉で『土台がしっかりしていないと高い家とか建てられないよね』という話をしています。それがあるからこそ細かいスキルや戦術がついてくる。いい土地を作ろうというのを皆に言っています。」

春シーズンを前にフィジカル、フィットネス強化も含めて個人のベースアップに取り組むこの時期の重要性をチームに落とし込みます。2022年度の決勝戦(対帝京)での大敗から厳しさを増した昨年度の練習…その必要性は皆、頭では分かりながらもどこか受け身になっていた姿勢を反省し、主体的に取り組む事が大切と話します。

「去年はやらされていた…それはコーチ陣が悪いとかじゃなくて、選手たちもあまり主体性を持てていなかったと思います。やっぱり結局強いチームって本当にラグビーを楽しんでいて、本当にラグビーが好きでプレーに余裕があるじゃないですけど、余力を余しながらラグビーをしていると思うのですけど、ワセダはこう…言われたことだけをやっているので対応力がすごく欠けていた。そういうところでも今は本当に大事な時期になっているのかなと思います。」

この日の練習の終わりにキツいフィットネス練習がメニューに組み込まれ、レストの時間に下を向く部員の姿が見られると、下級生の側から「頑張りましょう!」の声も。1月下旬から練習を開始した新チームの雰囲気に手応えを掴みます。

「なんか、全体的に楽しんでいるじゃないですけど、本当にやらされていない感じがしています。」

今年のテーマである主体性の浸透に加えて、グラウンドでの練習メニューやウエイトトレーニングに対して、一つ一つの意味をしっかり納得してから進める事も意識していると続けます。

「全員が意図を理解して、わからないまま進めない…一つの動作、一つのウエイトにしても全部これが何のために、グラウンドレベルで何のため、いつどういう時に必要になってくるのかというのを全員が理解してやっているので、それはすごい良い傾向なのかなと思います。最初は『ゆっくりでいいから、しっかり納得するまでやろう』っていうのを話しています。去年まで、ともすれば”なぁなぁ”になってしまっていたところを見直すことにもなっています。」

新体制では井上泰志選手、清水翔大選手、清透馬選手など昨シーズンまで下のチームでのプレー機会が多かったメンバー、リハビリに取り組んでいたメンバーを委員に選出。委員会の立ち位置をラグビーだけでなく、それ以外の事も議論する場に変えたいと話します。

「去年は結構ラグビーに特化した委員会だったのですけど今年は本当に新しいワセダを作るという意味で、チームカルチャーを大事にしようと言っています。規律の面であったり、本当に応援されるチームになるためにはどうしなきゃいけないのか、どういうチームがやっぱり良いのか、強いのかということを考えられる人間を委員に選出しています。僕とかマー(宮尾昌典選手)、守屋とかがラグビーリーダーにもなると思うのですけど、そこが規律のグループとうまくコミュニケーションをとりながら、2つのグループがうまく共存してやっていければ優勝するチームになるかなと思います。」

今週は2日間、日本代表トレーニングスコッド福岡合宿にも召集され、ジャパンの空気に触れてイチプレーヤーとしても刺激のある時間を過ごします。

「本当に周りはレベルが高くて。ただ自分ではもっと何もできないのかなと思ったのですけど、コンタクトレベルであったり、普通にコミット力は思っていたよりはできたのかなという感覚があります。選ばれに僕も行っているので、もっとアピールできるチャンスもあったですし、もっと積極的にやっていかなきゃいけないなというのは思いました。僕がアピールできるところはリーグワンでなくて大学でしかないので、大学レベルの試合で圧倒的になれるようにやっていきたいと思います。」

予餞会から1週間、個人としてもチームとしても更なる高みを目指して充実の時間を過ごしています。【鳥越裕貴】



スクラムを合わせる佐藤健次新主将(中央)。4日の予餞会では、初めての部歌「北風」のキャプテンソロを前にいつになく緊張した表情。
「高校時代に部歌はなかったので新鮮な感覚でした。(予餞会で)話すこととかは緊張しないんですけど、音を外さないかが心配で(笑)。」

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